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税務調査の対象者の選定

【税務調査の不安】

 「税務調査って、面倒だし・・・ちょっと不安だよね。」といった、税務調査に対する漠然とした不安の声は、私が国税局を退職し、税理士を開業した今でも良く耳にします。

また、「税務調査の対象って、どうやって決まるの?」といった疑問をお持ちの企業経営者の方は多いと思いますので、今回は法人税調査の対象法人の選定についてお伝えします。

【国税庁KSKシステム】 

 税務署による法人税調査の対象法人(資本金1億円未満の法人)の選定は、全国どこの税務署であっても、国税庁のKSKシステムを活用して実施しています。

 このKSKシステムとは、「国税総合管理システム」の略称で、「国税」、「総合」、「管理」のローマ字読みの頭文字を組み合わせたもので、2001年(平成13年)から全国統一運用がスタートした国税庁の基幹システムです。

 このKSKシステムには、国税に関する納税者の納税地や業種目、決算期等の「納税者基本情報データ」をはじめ、所得税、相続税・贈与税、法人税、消費税などの税目別の「申告データ」や「調査事績データ」、税目別の納付税額や未納・滞納等の「納税事績データ」、また、納税者に関する「資料情報データ」等があり、それぞれがデータベースを構成し、システムの処理メニューに応じて連動し、一元的に管理されています。

【法人税調査選定システム】

 法人税調査の対象法人の選定は、法人税調査を担当する税務署の統括官(管理者)が、このKSKシステムの「管理者メニュー」の一つである「法人税調査選定システム」を利用して行います。

 このシステムは、先ほどのKSKデータベースの中から、主に、「法人税申告データ」、「法人税調査事績データ」、「消費税申告データ」、「消費税調査事績データ」、「法人代表者の個人申告データ」、「資料情報データ」を基に分析し、その分析結果を法人ごとに「スコア化」した上で、調査優先度の高い法人が選定できるシステム仕様になっています。

【税務リスクが高い法人】

 選定システムで分析した結果は、「選定法人一覧表」や個々の法人ごとに「申告事績分析表」として出力することができます。

この分析表には、分析結果を踏まえた、調査優先度を示す「総合スコア」や決算期ごとの「税務署内優先順位」、「部門内優先順位」が表示されており、新人の統括官であっても、不正や課税漏れが想定される「税務リスクが高い法人」を選定することが可能です。

 【計数分析が調査選定の主体】

 さて、この選定システムにより算出される「総合スコア」の算出に当たっての主な判定材料は、ご想像のとおり、申告データの「主要計数」の分析が中心となっています。

 法人ごとに、所得金額や各勘定科目の計数について、前年対比分析や売上高比率分析など各種の計数分析を行い、その結果を踏まえた上で、不正や課税漏れが想定される分析値に該当する勘定科目や項目数がいくつあるのかをカウントし、その分析異常値に該当する項目数が多ければ多いほど「総合スコア」が高くなる訳です。

もちろん、分析異常値が出た勘定科目は、「申告事績分析表」にも個別表示され、調査を実施する際の「重点調査項目」になります。

【国税庁の不正重点主義】

 これまでの説明で「やっぱり、調査対象者の選定は、システムによる計数分析か。」と納得されたかもしれませんが、単純にシステムが弾き出した優先順位のみで選定している訳ではありません。
 確かに、計数分析によって、脱税が想定される法人や申告漏れの可能性が高いグレーの法人はシステムで抽出できますが、税務署が、限られた事務量を使って、 確実に「実地調査」を実施すべきターゲットは、多額の脱税を行っている不正法人です。
 この税務調査に関する国税組織のスタンスは、昔から一貫して「不正重点主義」なのです。

【調査は選定が9割】

そこで、税務署の統括官は、システムの分析結果を踏まえ、このグレーの法人の中から、多額の不正所得が見込まれる法人を絞り込み、優先的に選定して、部下職員に実地調査の司令を行うのです。
 この①不正所得が見込まれる「クロ」と「グレー」の選別と、②不正所得や課税漏れ所得金額の規模の見極め、判断が、正に統括官の腕の見せ所であり、不正発見割合を高め、多額の不正所得の把握に直結するスキルであり、「調査選定の妙」とも言える訳です。

したがって、調査選定スキルの高い統括官は、どこの税務署に転勤しても、良好な調査事績を毎年、挙げることができるということになります。
 このことが、国税部内で「調査は選定が9割(税務調査の結果は調査選定の良し悪しで決まるという意)」と言われる所以でもあるのです。

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